DIARY

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2017.08.17 Thu


「昨日の雲見た?」

って聞かれましても、ましてや午前零時過ぎ、まだ昨日と今日の区別も曖昧で、昼間のうだるような暑さにすっかりやられたせいで意識さえも朦朧として、2010年代の暑過ぎる夏の洗礼を毎年のように受けてヘロヘロになりながらもここまで生き永らへてはきたが、今度こそもう本当にこれまでかと思ったほど、今日の昼間の太陽は熱かった。
僕は流した汗が固まって出来た塩の結晶を住宅街の網目に散りばめながら、そう。確かにあの夕方に雲を見た。
それは入道雲の最期の姿だった。最後の入道雲の姿だった。どこかの誰かが見事に注いだ生ビールの立派過ぎた泡のような膨らみを真っ赤に染めて、壊れかけたその朱色の泡は天空に向かって無音の雷を放った。
僕は散々な一日が粉々に砕けたのを知った。溶けた自転車のサドルに跨って、無灯火の魂が宵闇を駆けた。入道雲が最期の咆哮を上げた。東の空、その朱い躯が裂けて濃紺の空が覗いたとき、輝き始めた月が姿を現したのを、夕焼けを背負って走る僕は見たのだ。

僕は答えた。
「見たよ、あれは君だったのか」
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